雲南道場感想
/Chulayarnnon Siriphol ケイ
/Chulayarnnon Siriphol ケイ
今回は家族が同行しない初めての一人旅でした。1週間以内に旅に出ないといけないと知っていろいろ準備が大変でした。両親や上司に説明したり、たまっていた仕事を片づけたり、ビザの申請や防寒具の用意をしたり。今回の旅に出る際に、中国にちゃんと辿り着けるか心配でした。途中で飛行機が故障するかもしれないし。それに着いたら着いたで、10日間も英語でコミュニケーションをしなければならない。だから自分の限られた英語能力で他の人とコミュニケーションをとれるのか不安でした…….旅立ちの日、両親が家の前でバイバイと手を振っている姿を見て、これから一人でやっていくんだと思いました。でも、旅の道連れ、インさんもいたので、なんだかジェームスとパン君(*タイで人気のある猿と犬のコンビ)になった気分がしました。機上でちょっと恥ずかしいこともあったけれどなんとか辿り着き、He Yuanさんが私達を空港に出迎えてくれました。そしてホテルに連れて行ってもらうと、タイ映画財団のウィさんとチャリダーさんがいました。あー、よかったとまた少し気が楽になりました….夕方にはYunnan Multi Culture Visual Festival に参加し、Cui、 Yumiko、 Makiko、Ryotaに会い、新たに中国人の友達が出来ました。同世代の人も少し年上の人たちもいたけれど、同じ種類の映画に興味のある者どうしで意見交換をすることができて嬉しかったです……映画祭は2日間と短期間でしたが、たくさんのドキュメンタリー映画を観ました。タイではなかなか見ることができないタイプのパワフルな中国のドキュメンタリー映画を目にしました…..その時に、中国の新世代のドキュメンタリー映画の監督たちは、デビュー作からどうしていきなり長編を撮るのだろうかと不思議に思いました。なぜタイ人みたいに短編映画から始めないのだろうか、と。
そして、DALIに出発した日、私達約30人はバスにぎゅうぎゅう詰めに座りました。4時間の間、うたたねしたりしているうちにDALIに到着しました….この日の夜は自分の短編映画“記憶の要約の歴史”を英語でプレゼンする日でした。内容はタイの複雑な政治についてだったので、上映前に外国人の観客に対し、タイの政治の概要を解説しました。映画上映後には、この映画を通して何を伝えたいのかを説明するのが難しかったです…..もしかしたらこれは自分の弱点かもしれません。本当のことを言うと、政治に関する映画を作ることは簡単なことではなく、状況を深く理解していなければならないのです。私自身もこの映画がタイの本当の政治状況を理路整然と映し出しているかどうか自信がありません。
その翌日にはオフィシャルなワークショップが行われました。Kikuchi先生の、音の仕事に関わった経験についての講義から始まりました。午後は私たちのグループ、Yumiko(日本人)Yen(台湾人)、Xiaobo(中国人)で集まり、Aiが私達のグループのアシスタントとして、DALIの街に行き、私達が映画にするのに興味のある題材を探しました。私たちはまず中国画を売っているおじいさんのインタビューから始めました。おばあさんの家は古い市場の裏にありました。楽しかったのはYenが地域の住民の家をノックして訪問し、住民とDALIの街の変化について話し合ったことでした…..実は2007年に私は家族と共にここに観光に来たことがあります。でも今回のDALIへの旅では観光客とは違う視点で見つめなければいけませんでした。翌日私はプロ使用の録音機材を使って初めて録音をしました。そしてKikuchi先生から録音の技術を学びました…..私達はDALIの街中でいろいろな音を探して回りました。そして私達が日常生活の中で見落としていた面白い音があることに気が付きました….その後集めた映像と音を10分以内の映像と音を関連させないというテーマを持った短編映画に仕上げるために全て見直しました。この時に私は、私達のグループが集めてきたfootageはひとつのテーマに絞っていないという問題があることに気が付きました。でも、いろいろなストーリーや、DALIであった人たちをたくさん集めてきていました….そこで私達は私達が撮って来たそのまま、DALIの多様性を見せる構図の短編映画を作ることに決めました。それぞれが映像の選択と編集に関して意見を出したので、意見をまとめるまでにかなり長い時間がかかりました。それぞれの好みと意見が違うからです。みんなが理由を用意して指摘し、グループの他のメンバーに認めてもらうように説明しました。この意見の違いは、私にとってはとても興味深いものでした。みんながそれぞれ違う国から来ているので。さまざまな意見を聞いているうちに自分も新しい視点を持つようになりました。
…このグループで私は編集を担当しました…..私達は音声を聞かずに編集を始めました。その後編集済みの映像に音声を選んでいきました。その結果、映像に新しい意味が生まれ、新しいストーリーが生まれ、新しい雰囲気も生まれました。
これは映像と音声の不調和から生まれた結果です…..私達はひとつの映像にいろんな音をつけてみました。その映像に最も合う音を探すためです。選んできた音の殆どは映像に合いませんでした。そしてその不調和こそが私達のプレゼンした内容でした…..私は、私達の作品が映像と音による実験だと思います…..その後Kikuchi先生のアドバイスを聞いて、その通りに改訂してみると、先生の音のデザインは目立ち過ぎずに映像となじみました。
音はそんなに大きくありません。単に雰囲気のためにあります。しかしこれらのささやかな音がイマジネーションを刺激し、新しいストーリーを生み出していました….小さな構成要素なのに、重要な意味がある…..そして映像と音声の編集担当としては、先生のアドバイスを受けて編集が出来てラッキーでした。映像と音声の編集のテクニックを新たに身に着けました。完成した作品を見ても、どのような過程で音声を編集するかが分からないからです。今回の映画の編集を通して私は、人は完璧ではなく全てが欠点を持つものだと思いました。だから心を開いて、他人がこの欠点を点検する場所を開けておくべきだとおもいました。そうすることで私達には見えていなかった新しい視点が見えるのです。単に私達のひとつの視点だけが見えるのではありません。(確かにこれも難しいことではありますが)…私達は2011年4月2日に土曜日の午前4時に編集を終えました。でもその後日本人の友人達とビールを飲んで朝6時まで起きていました。
翌日私達が制作した映画を上映後は、DALIからそう離れていない村で、地元の音楽を聴きに行ったりするリラックスした時間を過ごしました。その翌日は17キロ離れたところまで行き私の足はむくみました…..昆明に疲れ切って到着しました。ホテルについたのは夜中の1時過ぎでした…..別れはとてもつらかったです。今回の度に際し、一緒に良い経験をしてくれた仲間たちにお礼申し上げます。今回の旅が次の作品を生み出すエネルギーになるでしょう…今回自分とあと2人のタイ人の仲間がこのような貴重な経験をすることができてとても嬉しいです…..中国、日本のみなさんのこと、いつまでも忘れません。