山形ドキュメンタリー道場は、アジアのドキュメンタリー制作者が製作中の映画をたずさえて自然豊かな山形県の温泉地に創作滞在する事業です。
プレゼン・ワークショップから始まり、その後は生活をしながら、作品づくりを見つめなおすための〈思考を深める安全な時間と空間〉と〈新しい仲間との出会い〉、そして〈至福の温泉〉を提供します。撮影に取り組んできた作者が、膨大な映像素材をどのように構成し、編集していくのか。ドキュメンタリー制作において決定的となるこのプロセスを充実させて、映画をより豊かにしたい。メンターは「私ならこうする」とアドバイスするためではなく、作者が自ら心をひらくように、ともに問い、交感するために招かれます。答えは、作者自身のものでなければならないからです。
The Yamagata Documentary Dojo is a residency program for documentary filmmakers with works-in-progress. Asian filmmakers working on documentary projects are invited to reside in a hot spring village amidst the mountains of Yamagata Prefecture, using the retreat as an opportunity to review their work from new perspectives.
The program begins with a presentation workshop and mentoring sessions, after which filmmakers settle in, engage with the local community, and are allowed focused time and space to reflect deeply on their projects.
The Dojo aspires to foster a kind of collective for creative documentary, offering a safe environment to deepen thinking, opportunities to meet new peers, and the bliss of hot springs.

 

 

道場に参加した映画作家のコメント

道場から得たものは、勇気です。不安をいだきながらも舵をとる勇気。それを継続していくためには、他者に対する感性をみがき続けないといけない。
道場でみなさんのお話を聞いていると、みんな各々の土地(立ち位置)で映画に向かい合っているとを感じました。あそこには誰がいて映画をしている、そっちにも、こっちにもという事実に、あたたかく背中を支えられています。

小田香『セノーテ』監督/2018年「DOJO 1」参加

 

 

家族以外の人に見せた最初の場でした。
意外にも多くの人が私の映像や制作意図を肯定的に受け止めてくれ、作ってもいいのかもしれないと実感しました。
自分の作品がどう受け止められるか、事前に知ることができました。
具体的に制作の変更点・アイディアがいくつも出てきました。

藤野知明『どうすればよかったか?』監督/2022年「DOJO 4」参加

 

 

「道場」は「道(the way)」と「場(the place)」の二文字で構成されている。ひとつは動で、ひとつは静。ひとつは外で、ひとつは内。道場で、私たちは対立する物や感覚から、共存とバランスを探した。緊張とリラックス、有音と無音、見えるものと見えないもの、集団交流と個人、旅の目新しさと慣れた日常、温泉の熱さと雪の冷たさ……。そしてドキュメンタリーは、肘折に積もる雪にも似て、少しずつ積もり、凍っては溶け、時間の景色を形成していくのだ。

ルオ・イシャン『雪解けのあと』監督/2023年「DOJO 5」参加

 

 

おもに一人で撮影をしている私は、制作過程での具体的な葛藤や悩みを誰かと密に共有する機会をつくれていない。そんな私にとってこの道場は、解決に向かうためにアドバイスをもらったり、映画制作の方法論を教わったりするという感じではなく、本当に迷うべきところはどこにあるのかを教えてくれました。
自分一人では絶対に気付けなかった根本的な問題を、他者の目を介したことで、その後一人の作業時間にも、目が研ぎ澄まされていく実感がありました。

小森はるか『春、阿賀の岸辺にて』監督/2024年「DOJO 6」参加

 

 

主催者のメッセージ

そもそも現代人は忙しすぎる。創作に取り組む人を、仕事、家庭、社会活動の日常が追いかけてくる。撮影も編集もひとり。「いつまでやってるの?」焦りが首をもたげる。「ドキュメンタリーは主題に魅力があれば、なんとなくまとまるんだよ」
いやいや。一度立ち止まり、集中して創作の原点にきちんと向き合う時間と場所があった方がいい。クリエイティブ・ドキュメンタリーの作者には、世界を見つめるのと同じぐらい自分と対話してもらいたい。他者を通して自分を発見できる国際交流は、その手助けになる。山形ドキュメンタリー道場は、作品完成に向かう長い道中に必要な創造の湯治場である。

藤岡朝子 ドキュメンタリー・ドリーム・センター代表/「山形ドキュメンタリー道場」主宰

Modern life is overwhelmingly busy. For those engaged in creative projects, the daily demands of work, family, and social obligations can be relentless. Filmmakers often find themselves working alone on both shooting and editing, leading to feelings of isolation and anxiety. Some say documentary is just about finding a compelling subject, but no. People need to pause and dedicate time and space to reflect deeply on one’s creative process. Working in creative documentary requires you to be as observant of yourself as the world you are filming. Being in conversation with people outside your culture can help you find your own perspective. Yamagata Documentary Dojo serves as a creative retreat – a place for filmmakers to rejuvenate and advance their projects towards completion.

Fujioka Asako (Documentary Dream Center)