Yamagata Dojor

 

 

タイ、台湾、シンガポールのドキュメンタリー制作者5名を山形市に招へいし、蔵王温泉を宿泊地とする30日間の滞在を支援する「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」事業を実施した。最初の週には、日本の制作者や世界のメンター(講師)陣が集うワークショップを開催し、参加者同士の相互触発、切磋琢磨のきっかけを作る。そして滞在後半期には冬に向かう季節の深まりとともに、各自が制作中の作品と向き合える静かで集中した創作の時間とした。合間には山形の市民や子どもたちと交流、山形の文化と出会う機会を作り、地域と世界の邂逅が実現。「Faces山形」と題する短編映像シリーズの一環として3本の映像作品を置き土産にもらった。
またAIRパートナーのオブジェクティフス(シンガポール)へ日本から映像作家を1名派遣、当地で30日間の創作滞在が行われた。

 

● 主催: ドキュメンタリー・ドリームセンター
● 助成: 文化庁 2019年度アーティスト・イン・レジデンス活動支援事業
国際交流基金アジアセンター アジア・文化創造協働助成
Tokyo Docs ほか
● 後援:山形市
● 協力:認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭、山形大学人文社会科学部 今村研究室
● AIRパートナー:Objectifs (シンガポール)

 

 

 

「概要」

● 開催期間: 2019年11月6日~12月5日(30日間)
  (日本の制作者と講師が参加するワークショップを11/8(金)〜11(月)に開催)
● 会場: 蔵王温泉 松金屋アネックス、ロッジ蔵王ドッコ沼、山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー、山形大学 ほか

 

■ 【熟考】 自然豊かな蔵王温泉で、本国で撮った撮影素材を新たな目で見直す、集中した時間と場所を提供。タイ、台湾、シンガポールから女性ばかりの5人が寝食を共にし、友情を育みながら、互いの作品づくりを助け合った。ドキュメンタリー・フィルムライブラリーで収蔵作品をリサーチする、書き物をする、映像編集に取り組むなど各自で必要な作業と向き合った。

 

■ 【深化】 国際ドキュメンタリーの最前線で活躍するイスラエルとシンガポールの映画作家、音響デザイナーと撮影監督、日本の映像作家5名が参集し、4日間のワークショップを経験。滞在の後半にもオーストラリアの講師が蔵王入りし、アドバイスを受けながら作品づくりを深めた。

 

■ 【交流】 山形大学で公開イベント、フィルムライブラリーで監督たちの前作を一般上映、小川プロ作品の鑑賞と地元文人と交流、蔵王の小中学校で授業、日本庭園で紅葉狩り、山形交響楽団客演指揮者の公開講座、紅花染め体験、農家訪問、霧氷に輝く山頂散策など様々な活動。置き土産に3本の短い映像作品が完成した。

 

■ 【成果報告会】 AIR終盤の12/1(日)に蔵王温泉で、12/4(水)に東京・シネマハウス大塚で、一般公開の成果報告会を行なった。2019年10/15(火)には山形国際ドキュメンタリー映画祭と連動した事業紹介イベント「DOJOナイト!蔵王温泉で傑作が生まれる時」が開催された。2020年にはAIRパートナーのObjectifs(シンガポール)の企画で、当地で関連上映会とトークイベントが実現。

 

 

アーティスト・イン・レジデンス(AIR)参加者(11/6~12/5)
■ 『LOMA – Our Home』(台湾)
 監督:黄恵偵(ホァン・フイチェン)、編集:雷震郷(レイ・ヂェンチン)、ステファーノ・チェンティニ
■ 『Audacious Dreams of Kith and Kin』(タイ)
 監督:ワラーラック・ヒランセータワット(サリー)、編集:ドゥアンポン・パカウィロートクン(ビー)
■ 『Sorry No. 55』(シンガポール、Objectifsとの交換プログラム) 監督:クリス・オン
ワークショップ参加(11/8~11)
池添俊、及川菜摘、野村知一、山田徹、梁貴恵
メンター(講師)
アヴィ・モグラビ(映画作家/イスラエル)、タン・ピンピン(映画作家/シンガポール)、森永泰弘(サウンドデザイナー、サウンドアーティスト/日本)、山崎裕(撮影監督/日本)
アドバイザー
エルコ・ライティネン(フィンランド公共放送YLE)、エリー・ジョー(韓国DMZドキュメンタリー映画祭)、チャリダー・ウアバムルンジット(タイ映画アーカイブ)、ジュディ・ライマー(オーストラリア・プロデューサー)ほか

 

交換プログラム=シンガポールのアーティスト・イン・レジデンス(AIR)(12/2~12/29)
葉山嶺

 

 

主な一般公開イベント
■ 11/13(水)山形大学で上映&講演イベント
08:50~10:20 アヴィ・モグラビ監督、タン・ピンピン監督のマスタークラス
16:45~18:30 『庭園に入れば』上映(監督:アヴィ・モグラビ、2012、97分)&トーク
■ 11/22(金)YIDFF金曜上映会  @山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー
15:00 『You Idiot』(監督:クリス・オン、11分)&トーク
16:00 『Y/Our Music』(監督:ワラーラック・ヒランセータワット&デイヴィッド・リード、2014、82分)&トーク
18:40 『日常対話』(監督:黄恵偵(ホァン・フイチェン)、2016、88分)&トーク
■ 12/1(日)終了報告会(山形)
4週間の滞在を終え、参加者たちは滞在を振り返り山形で成果を披露
15:00~17:00 @SANGORO ONSEN LODGE(蔵王温泉878-26)
■12/4(水)終了報告会(東京)
山形から東京に移動し、AIR滞在の成果を報告
19:00~21:00 @シネマハウス大塚(東京都豊島区巣鴨4-7-4-101)JR大塚駅徒歩7分

 

 

● 参加者の感想

 

山形ドキュメンタリー道場2019は人生で最も思い出深い30日間でした。
(ワラーラック・ヒランセータワット|監督|タイ)

 

自然に囲まれた環境が大好きでした。朝ジョギングして編集の腕があがると思いました。湖畔は空気が良くて、山の霊気からパワーをもらえます。
(ドゥアンポン・パカウィロートクン|編集者|タイ)

 

ドキュメンタリーを作るとはどういうことなのかという核心、現実を生きる本当の人間と出会うことの意味、作りごとでない生の人生を撮ることの問題について。(カメラマンや音響デザイナーなど)バラエティに富んだ講師たちと共に、技術の話というより映画づくりの最も深い本質的な問題について話し合い、非常におもしろかったです。
(アヴィ・モグラビ(講師)|映像作家|イスラエル)

 

映画制作者のための多くの研修ラボでは、いろいろな人と朝から晩までマンツーマンのミーティングで、企画をどう思ったか、どうしたら改善できるか、など一方的に聞かされるばかりです。対してドキュメンタリー道場では、360度見渡せる空間で、各自がそれぞれの相手と組み合いながら同じ空間の中で稽古しています。みんなが互いを支え合いながら、各人が自分のペースで進捗する、というイメージ。互いを見ながら学び合う。「武道における道場」のメタファーは、研修ラボのモデルよりも企画を育てるのに有効な方法です。コミュニティから力をもらいながら、参加者ひとりひとりの精神に度胸がつくのです。
(タン・ピンピン(講師)|映像作家|シンガポール)

 

とても快適な環境です。風景は本当にすばらしくて、温泉と食事、人々。ここは身体的にとてもいいコンディションにしてくれます。そして作品づくりに取り組む精神的な空間を提供してくれるのです。企画は心を込めて丁寧な目で選ばれていると手に取るようにわかります。作品を良くしたいと思う作者たちのために、最高の環境が用意されていました。
(キャサリン・チャン|プロデューサー|香港)

 

それぞれ異なる段階にある企画、人生のさまざまなステージにいる制作者と共に、その世界に浸ること、没頭するのは楽しい冒険です。人生の経験を互いに共有することになるこの体験は、単なるドキュメンタリー・ワークショップ以上のものです。人間としての感情や脆弱さ、思いやりを見せあうことは、人生そのものを分かち合うことです。これは技術を教えるよりも重要で、だからこそ貴重で、このような親和力の高い守られたバブルのような空間だからこそ可能です。メンター(講師)がアドバイスする、という一方向ではなく、参加者全員が何かを貢献し、誰もが得ることのある場です。
(メアリー・スティーヴン(講師)|編集者|フランス)

 

台湾では毎日毎日が忙しく過ぎて、何年もたってしまう。月~金の仕事をして、そのうえ日常の面倒なことにせわしく時間をとられてきました。ここでは、そんなことが大したことではないのだと気づかされます。一本の作品に集中して取り組む時間が与えられます。環境、自然、言葉も本国と全然ちがうからこそ、特別な体験だと感じられます。
(雷震郷|編集者|台湾)

 

文化の違う他者と出会ってディスカッションすることには意味があります。世界はこんなに大きいのに、個人にはひとつの小さい箇所しか見えない。他の人と話せれば、より広くものごとを捉えることができます。またDOJOは、美しい自然環境の中で自分自身との付き合い方を見つけ、考えをまとめる機会をくれました。これはまさに長らく夢に見ていたことです。
(黄恵偵|監督|台湾)

 

ワークショップでは他の映像作家たち、特に私よりも経験のある人たちの考えを聞けたのがとてもよかったです。結果として、私は自分が強くなったように思います。距離と洞察を得て、自分の発想と映画企画をこれまでよりはっきり理解できるようになりました。
(クリス・オン|監督|シンガポール)

 

日本のフィルムメーカーとのつながりを求めて参加しました。今回のワークショップで彼らの発想やプロセスを知ることができてとても感謝しています。
(エリー・ジョ|DMZドキュメンタリー映画祭|韓国)

 

この道場では、誰かから教え(制作のヒント)をもらうというよりも、皆で物事の本質を探すことが主題でした。これは国籍、文化、制作スタイルが違う者同士が集まることで、より自分にとって制作とは何か、そしてなぜ作る(撮る)のかを自然に考えられた気がします。自分の制作スタイルとは何か。そして、取り扱うテーマの本質とは何か。道場でいただいた問いかけを常に自分に投げかけながら、今後も制作を続けていきます。
(池添俊|日本側の参加者)==> 感想全文

 

なにより、この数年眠っていた映像を皆さんに見ていただき、そこに写された被写体の方々を暖かいまなざしとともに迎えてもらったという経験は、まだこの先、長丁場となるであろう制作と公開、その先の歩みへと強く背中を押してもらったように思います。
(野村知一|日本側の参加者)==> 感想全文

 

蔵王の自然に囲まれて、作品について真剣に考えている人達と、朝から夜遅くまでドキュメンタリーのことだけを話す4日間。ワークショップだけでなく、夕食やそのあとの温泉でも、世界で活躍される映像作家の皆さんと気兼ねなく会話をすることが出来る空気感。到着してすぐに自分が『ドキュメンタリーのことだけ考えている』というある一種の瞑想状態であることに気づきました。
(梁 貴恵|日本側の参加者)==> 感想全文

 

道場に参加して何よりよかったことは多くの参加者と横の繋りを持てたことです。これも映画祭が30年育んだ文化があってこそだと感じます。作家と映画を育てようとしてくれる映画祭の家族的な愛情を感じました。ここで生まれた絆は一生の宝であり、今後の映画人生の中で大切にしたいと思います。かつての自分のような、制作に行き詰まり、下を向いてばかりいる孤独な若手インディペンデントの作家たちに、道場で学んだことを還元し、彼らを支えていけるような人になりたいと思います。
(山田徹|日本側の参加者)==> 感想全文

 

 

● パブリシティ

山形新聞2019/11/13「蔵王で映画と向き合う~山形ドキュメンタリー道場 アジアの監督ら滞在」
山形新聞2019/11/15「金曜上映会 ここが見どころ アジアの女性監督作品」
山形新聞2019/11/26「映画作り 通じる部分も 山形紅花染め、監督らが挑戦」
山形新聞2019/12/2「蔵王の4週間 成果発表 アジアの監督ら5人 山形ドキュメンタリー道場」

 

「山形ドキュメンタリー道場(1)/映像制作者たちの4日間 前編」
https://www.reallocal.jp/73521
「山形ドキュメンタリー道場(1)/映像制作者たちの4日間 後編」
https://www.reallocal.jp/73545
「山形ドキュメンタリー道場(2)/映像作家 池添俊さんインタビュー「再現でも、モノローグでもない『誰かの話』を撮りたい」」
https://www.reallocal.jp/73590
「山形ドキュメンタリー道場(3)/アヴィ・モグラビ監督 ✕ タン・ピンピン監督 ✕ 藤岡朝子さん 〜 なぜ「山形」で「ドキュメンタリー」の「道場」なのか?〜」
https://www.reallocal.jp/73960

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