Yamagata Dojor

 

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[目次]

◆ AIR (アーティスト・イン・レジデンス)参加作家(3組4名)

◆ 乱稽古(ワークショップ)に参加した作家(3組4名)

◆ 講師(メンター)(3名)

◆ 事業内容

◆ メディアでの紹介

◆ 制作物

◆ 参加者・メンターの感想

◆ フォトギャラリー

 

 

「山形ドキュメンタリー道場」は、アジア・ドキュメンタリーの聖地と呼ばれる山形県に、新作に取り組む映像作家たちが長期滞在し、国際交流を通して思考を深めるアーティスト・イン・レジデンス(AIR)事業です。ドキュメンタリー映画にとって、撮影後の映像素材をどのように編集するかが、作品の方向を定める決定的なプロセスです。本プログラムはこの段階を充実させるための時間と場所を提供します。

 

主なコンセプトは3つ:

 

(1)熟考する:日常を離れ、集中した時間と場所で製作中の作品を新たな目で見直し、問い返す。

(2)交流する:異国の仲間、映画関係者、地元の人たちとの交友で相互理解を深める。

(3)深化する:「乱稽古」で企画を発表し、自由な話し合いから新たな観点を発見する。

 

6回目の今回は、インド・中国・日本の3組4人の映像作家が大蔵村・肘折温泉に長期滞在。プログラムの最初に、講師3人と短期滞在の4人が加わる集中的な「乱稽古」(ワークショップ)で刺激をしあう4日間があり、その後はそれぞれの作品とじっくり向き合う後半に入るプログラムでした。

 

今年は、肘折の地域住民と様々な交流が進み、参加者同士の横の連帯と切磋琢磨がひときわ深まった事業内容となりました。

 

 

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開催期間: 2024/2/7~3/3 (26日間) / 乱稽古(ワークショップ)は2/9~12(4日間)
開催地: 山形県大蔵村肘折温泉、やまがたクリエイティブシティセンターQ1(山形市)
主催: ドキュメンタリー・ドリームセンター
  本事業は、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)の共通目的基金の助成を受け実施されました
協賛: NPO法人Tokyo Docs
協力: 認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭、山形県大蔵村肘折地区、大蔵村観光協会、肘折温泉旅館組合
後援: 山形県、山形県大蔵村

 


 

 

 

AIR (アーティスト・イン・レジデンス)参加作家(3組4名)

長期滞在を通して、制作中の作品に集中して取り組むプログラム

 

● 講師や短期滞在の制作者と共に4日間の乱稽古(ワークショップ)。各企画発表、質疑応答、討議にたっぷり時間をかけ、メンターの講義や上映、懇親会などに刺激の詰まった日々。
● 2日間の個別ミーティングで、講師たちと深く話し合い、課題を整理。
● 後半の2週間では、心身を蘇らせる温泉と地域の人々との交流にパワーをもらいながら、作品を新たな目で見つめ直し構成・編集の作業を進めた。
● 山形市で各監督たちの旧作の上映と観客と交流するイベントを開催。
● 一般公開で「山形ドキュメンタリー道場6 報告会」を開催。

 

 

 

『イレブン・イヤーズ Eleven Ears』

タミル語のわからない監督は、父の弟が生前に書き残したタミル語の詩集を英語と母語のカンナダ語に翻訳するよう父に持ちかけ、その対話と作業を映像に記録することにした。父が翻訳しながら語る思い出や連想から、これまで話題にしにくかった家族の記憶があぶりだされる。近所の牛乳屋、電機屋、不動産屋、薬剤師らも登場する実験的な手法の作品。製作国インド。

 

監督:ヤシャスイニー・ラグナンダン Yashaswini Raghunandan

 

編集者:アルニマ・シャンカール Arunima Shankar

 

 

『永菊(ヨンジュ) To Live』

中国、長江の三峡ダムの建設には約130万人の周辺住民が移住を余儀なくされた。巨大な国家事業のさ中、1994年から2012年の間、4人の女性に焦点を当てた「長江の女」シリーズが撮影された。年齢、経歴、性格のそれぞれ異なる彼女たちの生活模様を見つめ、選択を強いられ苦悩し、理想を求めつつも現実の中でゆらぐ彼女たちの姿を描く。本作はシリーズ3作目。

 

監督:馮艶(フォン イエン)Feng Yan

 

 

『春、阿賀の岸辺にて(仮題) Spring, on the Shores of Aga』

20代から新潟水俣病の患者運動の支援者となり、安田患者の会を率いる旗野秀人さんは、佐藤真監督のドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』(1992)の製作をしかけたり、「冥土のみやげ」企画という文化運動を続けるなど、活発に活動を続けてきた。時代の流れとともに変わる災害被害者の支援の形と、それでも終わりを迎えることのない旗野さんの記録。

 

監督:小森はるか  Komori Haruka

 

 

乱稽古(ワークショップ)に参加した作家(3組4名)
4日間のプログラムで製作中の映画企画を発表し、ディスカッションを通して切磋琢磨した。

 

芝田日菜(東京都) 「反照」 Reflection

 

石川泰地(東京都) 「Talk Roll Wheel」

 

島田隆一(東京都) 「地球はゆっくり動いている」

 

遠山慎二(東京都・編集者) 「地球はゆっくり動いている」

 

 

 

講師(メンター) (3名)
ワークショップ、講演、個別ミーティングを通して、参加者が映画企画を前進させるための手助けをしていただいた。

 

秦岳志(豊中市、映画編集者・プロデューサー)

 

タン・ピンピン(シンガポール、映画作家) Tan Pin Pin

 

ニルス・ペイ・アンデルセン(コペンハーゲン、映画編集者) Niels Pagh Andersen

 

 

事業内容

(プレイベント)
山形国際ドキュメンタリー映画祭(2023/10/11)

大蔵村肘折温泉で撮影された『雪の詩』(1976年製作)を35ミリのネガフィルムから上映用デジタル素材に変換し、お披露目上映した。映画の権利者(監督遺族)と肘折からゲストを迎え、トークイベントを行った。入場者数152人。

乱稽古(2024/2/7~12)

大蔵村肘折温泉で滞在しながら、企画発表、マスタークラス、ディスカッションや実習がぎっしり詰まった、4日間の濃厚なワークショップを行った。参加者は11人、スタッフとオブザーバーは10人。


個別ミーティング(2/13~14)

乱稽古のグループディスカッションで刺激を受けた長期滞在作家は、3人の講師と個別に面談し、ゆっくりと話し合う時間をもった。



引っ越し(2/13、2/19、2/24)

参加者は滞在期間中、4つの宿にそれぞれ転宿。湯治場のたくさんの旅館に分宿することで、地域の人たちとの関係づくりや経済効果の配分への配慮から考案されたスタイル。

Movie Night (2/18)

「波の下、土の上」(小森はるか監督)
大スクリーンで参加者の旧作を内部上映後、作品について語り合った。

Movie Night (2/20)
「Presence」(ヤーシュ監督)「Breaking the Circle」(アルニマ編集)「天津の一日」(フォン・イェン監督)
大スクリーンで参加者の旧作を内部上映後、作品について語り合った。

ヨガ教室(2/21)

チラシを作成して村の人に呼びかけ、老若男女17人の参加を得てヨガ教室を開催した。講師はアルニマ・シャンカール。

地面出し競争 (2/25)

肘折名物のイベントに「道場破り」チームとして出場。雪の下を土が出るまで掘り進みスピードを競うが、今年は記録的に雪が少なかった。過去の道場の参加監督も加わり奮闘したが、競技は41組中最下位でゴール。

Movie Night (2/26)

「絶唱浪曲ストーリー」(川上アチカ監督)
山形ドキュメンタリー道場3(2021年)の参加作家の完成作品。内部上映後、川上監督と作品について語り合った。

ヨガ教室(2/27)

前回好評につき、参加できなかった地域の人の要望で再度ヨガ教室を開催した。参加者8人。講師はアルニマ・シャンカール。

英会話教室(2/28)

地元の企画で外国人客相手の接客を練習する英会話教室に講師として参加した。

進捗発表会 (2/29)

「阿賀に生きる」(佐藤真監督)
小森さんの取り組んでいる企画と深い関係にある映画を鑑賞し、上映後に小森さんの進捗発表と話し合いをもった。

山形市で続く進捗発表会(3/1)

「山形市へ移動し、ヤーシュとアルニマ、フォン・イェンの進捗発表と話し合いをもった。

山形市で上映会 (3/2)

山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)主催の「金曜上映会」で、参加監督の旧作『長江にいきる』(フォン・イェン)と『あの雲が晴れなくても』(ヤシャスウィニー・ラグナンダン)を上映。中心街のやまがたクリエイティブシティセンターQ1で、参加者約30人と質疑応答を行なった。


山形ドキュメンタリー道場6 成果発表会 (3/2)

プログラムの最後に、長期滞在の4名が成果発表会を行った。滞在の経験と感想を、写真を使いながら振り返った。滞在中に撮った動画も上映。終了後は同じ会場で交流会が開催され、集った人たちと感想を分かちあった。

ショートフィルム FACES Yamagata

肘折温泉での滞在中に長期滞在の4人がそれぞれスマホ等で自由に記録した映像作品を発表。今後ウェブ上で公開する。

 

 

メディアでの紹介

山形新聞 「肘折 映像構想も温まる」(2024/2/14)

 

山形放送 「18時の県内ニュース」(2024/3/4)
https://vimeo.com/926495878/09afb228d4?share=copy

 

 

制作物

 

参加者募集(チラシ)

 

全企画・参加者紹介の小冊子(日英28ページ)

 

記録映像(2パターン) 現在制作中。

 

 

参加者・メンターの感想

 

4日間、朝から夜までどっぷりと映画について考える時間は濃密で幸せでした。普段の生活ではここまで濃い密度の時間を過ごすことはないので、貴重な経験でした。皆さんの言葉から、自分でも気づいていなかった自分の癖や、無意識に考えていたことを自覚しました。客観的に見て自分の作品がどう見えるかが分かりました。

 

今後、映画について妥協せず考えることをやめず、(映画作りに限らず)行動をし続けていくための糧になる経験でした。

 

たいへん励みになりました。ドキュメンタリー映画の編集は、毎度膨大に時間がかかるわりに報われないことも多い仕事だなぁ、とくじけることもありますが、喜びとやりがいのある代え難い仕事でもあることを今回の交流でひしひしと感じました。

 

自作の参考になるアドバイスがもらえたこと以上に、いくつもの未完成の作品について、みなさんと話し合うこと自体が、単純に楽しく、映画を続けるモチベーションになりました。

 

ずっと一人でやってきたので素材との距離が取れなくなっていました。ディスカッションをしている中で考えもしなかった作品の可能性が見えてきました。

 

中国では、緊密なコミュニティだったインディペンデント映画の作り手の多くが外国に出てしまい、お互い何をやっているかわからない。一人だと「別に作らなくても」とあきらめていたところ、今回は大きな励みになった。

 

ともにありながら互いの空間を尊重する、支え合うシスターフッドが生まれました。煮詰まったら隣の部屋をノックして一緒に散歩をしたりお茶を飲んだりして気分転換ができる環境でした。

 

英会話が苦手だったのが、一緒に食事をする時間のおかげで交流ができるようになりました。

 

地域に迎え入れられながら創作滞在する環境は、ドキュメンタリーを作るプロセスに似ている。ホテルの個室に「缶詰」にされるのではなく、人と交流しながら自分を発見していき、自分らしさを貫けるようになる。

 

もの作りをする自分たちにとって「じっくり考えるひとりの時間」と「人と接する濃い時間」の両方が必要なのです。道場には両方ありました。

 

たとえばお地蔵さんを見つめるとき、自分のようにぐいぐい近くに寄って細かく見つめようとするタイプもいれば、遠くからそっと手を合わせ寄り添うタイプもある、と仲間を見ていて気づきました。

 

一番は、自分と同じようにものづくりに悩んでいる仲間がいることを知ってうれしかったです。

 

いつも一人で悩んで、ただ焦ったり混乱したりしてきたけど、これまでと違う「息の仕方」を覚えた。柔軟に考えること、悩む時間に耐える方法を教えてもらった。みんなと別れたあとも大切にしたい。

 

キャリアの中盤期なのに参加できるプログラムがありがたい。大人になってからは学び合える場はあまりない。人との関係性の中も、防御を張るようになる。今回のように身をさらし裸になることは容易ではないが、そのことで生まれる強さに気づいた。

 

言葉の壁を越えて、何でも分かち合えた安心できる友情は特別なものだった。恐怖があっても乗り越えられる気がした。

 

楽しい日々でした。メンターの私にとっても多くの学びがあり、長年たくさんのワークショップに参加してきた中でも、これは五指に入る内容でした。

 

 

フォトギャラリー

 































 

 

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