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「映画上映者の国際交流!インドネシア編」に参加して
/NPO法人映画保存協会 石原 香絵
(2014.01.18)
 
筆者の所属するNPO法人映画保存協会(FPS)は、東南アジア太平洋地域視聴覚アーカイブ連合(SEAPAVAA)に賛助会員として加盟し、欧米以外の地域の映画保存運動やフィルムアーカイブ活動から多くを学んできた。「映画上映者の国際交流!インドネシア編」においても、映画フィルムを収集・保存するシネマテーク・インドネシア代表のAdisurya Abdy氏や、シネマテーク・インドネシアと協力関係にあるインドネシア・フィルムセンターの方たち、そしてタイ国立フィルムアーカイブ副代表のチャリダー・ウアバムルンジット氏とお会いし、有意義な時間を過ごすことができた。しかしそれだけでは日頃のFPSの研究や活動の範疇の外へ出ることはない。
 
「インドネシア編」が刺激的だったのは、11月の「日本編」のために来日したラインプロデューサーのサリ・モフタン氏、映画プロデューサーのメイスク・タウリシア氏、映画ライターのアドリアン・ジョナサン氏の3名を介して、現地の映画祭(ジョグジャ・ネットパック・アジア映画祭)、映画学校(ジョグジャ・フィルム・アカデミー)、ミニシアター(キネフォーラム)といった魅力的な場で映画監督や学生と交流できたことである。日本から参加したドキュメンタリー・ドリームセンターの藤岡朝子氏、名古屋シネマテークの酒井健宏氏、映画監督の深田晃司氏からも興味深いお話をたくさんうかがった。そのような機会は筆者にとってほとんど初めてのことで、貴重な経験となった。
 
もちろん映画保存の領域でも、「上映」の仕事は重要な一部を占める。FPSも、地元の視聴覚ライブラリー所蔵16mmフィルム、家庭に眠る8mmフィルム、そして無声映画等を対象に、古い喫茶店や教会等を会場に幾度となく上映会を企画してきたし、事務所には30名程が入れる上映スペース(記憶の蔵)もある。それでも自らが上映者/上映団体であるという認識はほとんど持ち合わせていなかった。しかし考えてみれば、同じ映画でもシネコンでかかるようなメインストリームの作品ではないという点で、今回交流した上映者が扱っている自主制作映画との共通項は少なくない。海外で発見・復元されても、日本に紹介されないままの珍しい作品が数多くある中で、FPSとしても、上映という仕事にもう一歩踏み込んでみたくなった。
 
訪れた上映場所の中でとくに印象に残ったのは、ジャカルタのインドネシア国立映画製作所(通称PFN)である。10年以上放置されていたというこの建物では突如、日本統治時代のインドネシアの歴史と向き合うことになった。内部に旧現像場の機材や映画フィルムが置かれたままのこの建物では現在、映画監督のエドウィン氏が主宰するLab Laba Labaというグループが上映会やワークショップを企画している。政府の方針に従えば解体されてしまうことになるこの建物の置かれた状況を、日本の映画人にもぜひ知ってほしい。
 
海外で日本映画がどう受けとめられるのか、その反応を垣間みるのも面白い。インドネシア滞在期間中も、現地で小津安二郎監督の無声映画『非常線の女』(1933)と同監督の代表作『東京物語』(1953)が上映されたが、後者は上映素材として国際交流基金所蔵の16mmフィルムを使用した。映画保存の専門家は大抵の場合、フィルムの物理的な状態や機材メンテナンスといったことに神経を尖らせる。FPSの名称が映写速度を意味するように、日本の無声映画であれば適正映写速度で、活動写真弁士の説明や音楽の生演奏と共に、35mmフィルムの復元版を用意して、その映画が初めて上映されたときのオリジナルの上映形態に限りなく近づけようとする。こうしたこだわりも大切ではあるが、たとえ状態の悪いプリントの上映であっても、映写ミスや音声トラブルがあっても、皆が一所に集まって同じ映画をみて、後で感想等を語り合ったりするのは無性に楽しい。
 
楽しかったといえば、予定されたシンポジウムや質疑応答の時間からはみ出して、スケジュールの遅れからロビーで上映開始を待ちながら、あるいは食事を共にしながらおしゃべりに興じた時間も忘れ難い。堅苦しい議論になると筆者の英語力ではついていけないものの、どこの会場でもスイーツや飲み物等がロビーに用意され、仲の良い若手の映画監督たちや好奇心溢れる学生たちと雑談を交わすことができた。2015年2月にはタウリシア氏の再来日が予定されているし、インドネシアで出会った多くの若者が山形国際ドキュメンタリー映画祭に言ってみたいと口にしていた。彼らとの、あるいは彼らの友人たちとの再会を今から楽しみにしている。
 
以上
 
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石原香絵
NPO法人映画保存協会(FPS)代表。米国のL.ジェフリー・セルズニック映画保存学校修了後にFPSを立ち上げ、幻の日本映画を発掘・復元・上映する「映画の里親」、東京都文京区の委託事業「文京映像史料館」、東日本大震災の直後に立ち上げた「災害対策部」、〈ホームムービーの日〉日本事務局等の活動を通して映画保存の重要性を訴えている。FPSは東南アジア太平洋地域視聴覚アーカイブ連合(SEAPAVAA)の賛助会員。

 

 

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