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「イーッカさんとの対話」の成果!

2012年9月10日~17日、フィンランドよりドキュメンタリー映画のプロデューサー、イーッカ・ヴェヘカラハティが初来日し、日本の観客や若い映画制作者と交流しました。

フィンランド・センター主催のウェルカム・レセプションでの挨拶では「自分は少しだけ皆さんより人生経験が長い。この機会に思う存分私を利用し、搾取してください」と切り出し、ドキュメンタリーと取り組む日本の若い作り手たちとの出会いを喜んで迎えてくれました。

映画館ポレポレ東中野で催された特集上映「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー 山形in東京2012」では、「イーッカさんがやって来た!」と題した小コーナーで、氏が過去に製作に関わった『革命の歌』『ビラルの世界』『メランコリア 三つの部屋』が上映され、その経験を上映後に聞くことができました。



9/14(金)映画美学校は、3時間半に渡るドキュメンタリーのレクチャー「見ることとは何か? 独自な視点を持つ」。『サン・ソレイユ』『Reindeer Spotting』など映画作品を部分上映しながら、ドキュメンタリーの映画作り、作家の主観の重要性などについて縦横無尽に語り、50人以上もの観客を魅了しました。

そしていよいよ9/15(土)は「イーッカさんとの対話」当日。イーッカさんは6時間以上にわたり、日本の若手作家の制作中の映画企画の発表を受け、各企画に対して丁寧に質問を投げかけ、会場に居合わせた他の制作者にも意見を求め、発表者が「解」に至るというより自ら考えさせられるように「対話」を深めていきました。

発表者の企画は様々でした。ある有名写真家のプロジェクトに立ち会う作品、故郷への複雑な思いをイメージ映像で捉えた作品、第二次大戦の友情の記憶を大事にする韓国の元老兵について、原発事故後の福島で長期撮影したもの、自殺したフリーターを巡るパーソナルな記録、そして老朽化した団地とそこから追いたてられる老女たちについての作品。

午後には仏独の大手公共放送アルテで長年ドキュメンタリーの製作に関わったハンス=ロバート・アイゼンハウワー氏も加わり、企画の捉え方と評価についてイーッカさんと論争するなど、興味深い展開となりました。会場からはNHKエンタープライズで国際共同製作を担当する今村研一氏も発言し、同じ企画に対して同じプロでも様々な見方があることがわかりました。企画をプレゼンする者同士でも対話が深まっていました。

完成した作品についての意見交換と違って、あらゆる可能性が開かれている、固まる前の半熟状態のものを皆でシェアしているせいか、何かを共有しあう者同士の絆が結ばれていくような雰囲気で、皆さん最後はとてもハイになっている感じでした。打ち上げの中華料理店でも、その後の二次会でも(そして朝まで続いた三次会も)「帰りたくない」的オーラが漂っていました。

以下、企画をプレゼンした制作者からの感想の一部です。
「1歩、前に進むにあたって非常に有意義な時間」
「作家同士彼らとの対話も自分にないものを気付かされ、普段どうしても自閉がちになりがちなので、とても有意義だった」
「フラットであたたかい空気」
「作り手の、まだ原石のような言葉、思いを拾い上げて、そこから作品の方向性を示していく(イーッカさん)」
「非常に貴重な機会」
「ローカルな題材が海外の方にはどう見えるのかを知ること、プレゼンの仕方についてのアドバイスなど、とても勉強になりました。」
「本当に夢みたいな時間」
「もっとあれもこれも聞けばよかったと今日になってちょっと反省」
「今後の制作の勇気と元気が出ました」
「他の人のプレゼンでも、制作の過程の、志向の整理方法や、アイディアの整理方法の筋道をどうやって見つけていくのか、という地図が見えてきて、ものすごく参考になりました。」
「何よりたくさんの重要な出会いがあったことが大きかったです。」
「『人は一人で生きるにあらず、人と人の間で生きる事で人間となる』を実感した一日でした。」

ひとりで撮影し編集する映像制作の中で、人と意見交換したり、自分の疑問や不安を打ち明ける場があまりない、個人のドキュメンタリストたち。今回のイーッカさんの来日と集いで、何か大事なことに触れられたように思いました。

(2012年10月1日 文:藤岡朝子)









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